千住サウンドのめざすもの Vガンダム総監督 富野由悠季  今回のBGMの作曲をお願いした千住明氏の作品を、 はじめてスタジオで聞かせてもらったときに、単純に幸せだなー、と感じた。 時代とともに音楽のありようは変るし、クラッシック的な作曲でも、 今後の音楽の方向性は模索していかなければならない。 それを考えて仕事をしている若い才能と出会えたということは、とても嬉しいことなのだ。 クラッシック音楽をクラッシックなままでなく、 次の時代にあっても鍛えられた交響曲として創作していくためには、 なにを学び、なにに気をつけなければならないか、ということを、 今回のVガンダムのBGMは渾身の力をこめて探し求めていると聞こえてくる。 ぼくにはその具体的な説明ができないから、このCDを聞いて欲しい。 千住氏が語ってくれているから、といっておく。 オーケストレーションを組むときに気をつけなければならないことは、 メロディ・ラインの明確性と、それぞれの楽器の特性の重ね方とその出入りを、 音響学的原則からはじめながらも生理の波に共振するように丁寧に創ることだ、 と聞こえないだろうか。もちろん、どこかで聞いたようなフレーズが 出てきたりするのは気になるが、この種の仕事は、 時間と予算とロボット物の背景音楽という制限がくわえられているなかでのものである。 この全部を自分のものでやってみせるというのは、不遜以上に無定見である。 問題なのは、ただの真似ではなく、千住アレンジからはいっていったものが、 次にどのような独創をめざそうとしているのかという、そのこころざしである。 その試みをてらいなくやってみせる若さは、貴重なことである。 たしかに、このCDは、この種の音楽がめざさなければならないものが いっぱい詰まっていて唸ってしまうのだが、この力をVガンダムに 利用させてもらえる幸せは、ちょっと得難いものである。 機動戦士Vガンダム SCORE I KICA153(1993/7/7) オリジナルの文章はこのままで右寄せ