BATTLE ROYALE 外伝


第一部
試合開始


 もう五人だ。五人も死んでしまった。怪我人もいる……。
 強い憤りを感じながらも、大貫慶子はなんとか心を平穏に保とうと、自分にいいきかせた。
 幸いなことに舞知の非情なやり方に、奮起して反発を覚えるものが多い。たいして仲間意識の強いクラスではなかったけど、こういうときこそ団結力みたいな、お互いが協力し合うような結束が必要なのだ。さっきの都ゆきひろのように誰もがやる気になってるわけではない。(ただし彼の場合同情できる)ああいう姿を見て都が言ったように必ず復讐、殺されたみんなの仇はこのクラスメイトが代わってとってやるという復讐を誓うのではないか。実はみんな外で待っていてこの政府に立ち向かう準備をしているのではないか。そんな気が慶子はしていた。――――ただ、残念ながら慶子の座っている位置では都が間壁の銃を奪って出ていったことは見えなかった為、知らなかった。
 ついに真尋の順番が回ってきた。真尋は傷口の右肩を押さえつつ立ちあがり、手で押さえたまま前に歩き出た。少し歩いた時にぐらっと体勢を崩してこけそうになっていた。
 「はーい、じゃあ宣誓してくださいねぇ」
 舞知がその真尋に声をかけた。真尋は黙って下を向いて何も言い出しそうになかった。その時、舞知の眉(年に似合わず、ほとんどないぐらいの細眉)が、ぴくりと動いた。――――いけない。舞知を刺激するようなことをしてはいけない。落ち着いて、真尋。――――仇を。あなたは仇をとらないといけないでしょ。西岡くんの。まだ、死ぬわけにはいかないのよ。――――あの頃。三人でふざけあっていたように。西岡くん。おもしろい男の子だった。ちょっと、引かれるところもあるすてきな男の子だった。(ああ、過去形ね)わたしには章くんがいたから、一定の感情以上にはならなかったけど。あなた、好きだったじゃない。いいえ、もちろんはっきりとその意思を聞いたわけではなかったけど。わかるわよ。あなたと……わたしの仲なんだもの。中学に入って同じクラスになった時、お互いに『この子とは友達になれそう』……そう思っていたんだよね。だから、それ以来わたしたちは友達になったし、親友と呼べる仲になったもの。章くんと、西岡くんと。どっちがいい? なんて二年の時に言ってたよね。学校が終わって一緒にバーゲンに行って、ちょっとはぐれて、それでもお互い買い物を済ませてきたら同じ服を選んでたとか、何も言わないのに見てるテレビ番組がいつも一緒だったとか、誕生日が三日しか違わないとか、生理の日まで同じだったとか、とにかく何事も気軽に、時には真剣に、なんでも話のできる。――――わたしたちは親友よね。真尋。――――だから、わかる。あなたが今どれだけつらいか。どれほど苦しんでるか。――――言えるわけがない。そんなもの、誓えるわけがない。
 真尋は少し舞知の視線を避けるようにして言った。――――慶子の考えは……ちょっと甘かった。
 「私たちは、殺し合いを、する!」
 びっくりするぐらい大きな声だった。しかもはっきりと言っていた。三回続けて。「やらなきゃやられる」 それも三回大きな声ではっきり言った。――――慶子は驚いた。真尋がそんなことを言いきれてしまうところよりも(この場合言わないと殺される可能性が高いから、まあ言うのはしかがないと思えるにしても)、あんな大声がでたことに驚いた。普段は決して自分をそれほど主張しない、どちらかといえば大人し目の子だ。そんな――――大声がだせるような女の子ではない、と思っていた。
 ――――なぜ? そう問いかける前に真尋は教室を出ていった。慶子には――――目もくれなかった。

【川田章吾優勝まで あと38人】


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