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ELYSION 〜永遠のサンクチュアリ〜 前編



秘書「今回はエリュシオンのレビューにいきましょう」

 

三剣「テリオスが発売した、メイドをターゲットにしたアドベンチャーゲームだ

 

秘書「一見するとメイドモノのギャルゲーに見えますね、これって敬遠する人が多いように思えるのですが」

 

三剣「だろうね、実際俺も最初そう見えたし、というより事実メイドモノだし

 

秘書「ボスは今「最初」といいましたけど、それが購入のきっかけに変わったのはどうしてですか?」

 

三剣「メイドモノっていっても萌えブランドのメイドモノでしかない、つまり商業的な意味合いを出なくて、そこら辺につっこんだモノが何も無いというのが俺にとって最大の減点材料だった」

 

三剣「でもレビューとかで見てみると、メイドそのものを突き詰めた作品であるって書いてあって、だったらプレイしてみようって思って購入した、それにシナリオライターが火焔聖母の藤木氏だということもでかいな」

 

秘書「実際どうでした?」

 

三剣「そこら辺については今からレビューしていこう」

 

 

<キャラ>

 

 

秘書「一番最初はキャラのレビューにいきましょう」

 

三剣「攻略対象となるのは隠しキャラ含めて色々いるが、メインの四人に関しては、何らかの諸事情があって半ば強制的に連れてこられている。中には人身御供の状態もあるようだ」

 

三剣「まず最初はミレイから紹介していこう、本名大原魅麗、年齢は18歳、名前から分かるとおり日本人だ」

 

秘書「東京の中堅総合商社の社長令嬢です。音大を目指して勉強していたんですが、父親が共産圏への不正貿易をネタに脅迫されていて、それを知り自ら人質として邸に入りました」

 

三剣「日本人ならではの背景の無い正義感を持っているため周りからは子供扱いされているというのが面白いな」

 

秘書「向こうは個人主義ですからね。縁という概念は向こうの感覚からすると荒唐無稽に写るみたいですし

 

三剣「神が介在していない世界というのはそう映るのだろう。日本みたいに神と共に歩むという感覚も理解できないだろうな」

 

秘書「でもそれを差し引いても子供っぽいと思いますが

 

三剣「まぁそれは設定として記されていたからよく現れていたと思うぞ(^^;)」

 

秘書「続いてはクリス、本名クリス・マクレインです。一家は製薬事業に携わり、自身もその研究者を目指しますが幻覚剤の製造のトラブルに巻き込まれ、パドリーノから脅迫を受け、その対抗目的で屋敷に入ります」

 

三剣「彼女はリアリストだな。リアリストといっても日本人が考えるリアリストではなく欧米独特の個人主義者がよく出ているみたいで、このキャラも造形は高いと思う」

 

秘書「ディアナとは主義の違いで距離を置いています。主義とはカトリックとプロテスタントの事です」

 

三剣「このちがいというのは俺らからしてみれば何て事無いと思うかもしれないが、向こうはそこら辺にすむ普通の人が「あいつは悪魔だから」みたいな事を平気で言うのだそうだ

 

秘書「基本的にプロテスタントが生まれたのはカトリックの内部腐敗が原因でしたからね」

 

三剣「とはいえルターはあくまでも自浄作用をねらって95項目の提題をしたらしいが、結果的に上層部の反感を買って追い出されてしまったからな」

 

秘書「その焦点のひとつとなっていた免罪符問題でも罪の判定が教会にあるという事になりますよね。実際は神が決める事なんですがね」

 

三剣「ちなみにプロテスタントとは「抗議者」という意味だ。それを考えると当時の状況がどのようなだったのか想像がつくと思う」

 

秘書「って話がそれてしまったので次に行きましょう。続いてはジェーン、本名ジョバンナ・ロッセリーニ、イタリア人です。アメリカへの移住が夢なので自分の名前を英語ジェーンと名乗っています」

 

三剣「一般家庭なのだが先祖代々マフィアである事は珍しくないらしい。基本的に人身御供という形でここへ訪れたのだが、性格は明るく誰でもうち解けるムードメーカーだな」

 

秘書「続いてはディアナ、本名ダイアナ・ハーディ。貴族の生まれですが妾の子として生まれたために家族の触れ合いも知らず置き去りにされてしまいました。性格は内向的で自分の意志というのあまり感じられません」

 

三剣「自分の意志がないキャラを自分の好きなように染め上げる。展開としては王道だがディアナシナリオはそこら辺に少し踏み込んで記されている。ここに注目して読むのも面白いと思う」

 

秘書「ここからはざっと紹介してきましょう。一番最初はパドリーノです。パドリーノ邸の長です」

 

三剣「ジョークが好きで好々爺の部分も見せるが残酷な人間だ。でも残酷だから人間味を感じないというのはまた別の問題なんだな。ここら辺のさじ加減は秀逸だと俺は思う」

 

秘書「キャラというとどうしても一辺倒な解釈で構成されてしまいますからね」

 

三剣「西洋のキャラを違和感なく構成できるライターはポリスノーツの小島監督ぐらいしか思い浮かばないし」

 

秘書「続いて紹介するのがシルヴィアーナ、通称シルヴィーです。謎の女性、パドリーノ邸のナンバー2の階級に位置します」

 

三剣「主人公の味方になる事もあれば敵になる事もある。彼女の殺されるバッドエンドもあるし、だがそれは彼女自身の目的があり、それこそが今作の藤木氏が描く「メイド」というコンセプトに関わってくるので注目して欲しい」

 

秘書「彼女の行動は愛溢れる行動なんです。一つの事のために全てを捨てられるというのは解りますよ、女として」

 

秘書「続いてはアントニオです。ファミリーの構成員ですね」

 

三剣「性格は三枚目で女好き、このキャラで面白いのは基本的に敵なんだ。でも葛城はパドリーノによって上位階級を与えられているから従わなければならないという事だけ。つまりパドリーノの命令一つあれば何の躊躇もなく葛城を殺す。そういう存在だ」

 

秘書「続いてはソードです。アントニオと同じ構成員。寡黙な印象を受けます」

 

三剣「彼は彼なりに事情を抱えているのだが基本的に本筋に絡んでこない。もう少し彫り込みようがあったと思うのだがな」

 

秘書「続いてはブルーノです。厳つい体格に無骨な印象を受けますがパドリーノ邸のミサを仕切る神父です。しかし当然マフィアの一員です」

 

三剣「基本的にブルーノもアントニオと一緒、主人公に対してはあくまで形式上の礼儀しか払っていない」

 

秘書「ですが、状況によっては何故神父を志したのか?自分の仕事に対しての疑問というのを吐露するシーンがあるのですが、シナリオを進めていくとよくわかります」

 

三剣「続いてはヘレナだ。下っ端メイドでドジっ娘だ」

 

秘書「正直印象に残るというのではないですね。彼女のシナリオは藤木氏ではないですし」

 

三剣「様々な関係をモチーフとしているのだからそこら辺のコンセプトがもう少し見えてくればなと思った」

 

秘書「続いてマリアです。パドリーノの娘です」

 

三剣「後半から登場してくるキャラなのでどうしてもエンディングが急転直下で終わるイメージあり。キャラ造形の中では唯一欠点が強く出てしまったキャラだと思う」

 

秘書「続いてはマナです。ゲオハルトの元で下働きをしている女の子です」

 

三剣「このヘレナとマナに関しては本作中のコンセプトとはまた違う物が組み込まれている。シナリオライターの藤木氏曰く、マナのコンセプトに関しては機会があれば書いてみたいそうだ」

 

秘書「最後に紹介するのはフローリィです。このキャラはDCに移植された際に追加された新キャラです」

 

三剣「新キャラといっても杜撰な作りにはなっていない。シナリオにうまく組み込んであって違和感がなかった。最後の最後の謎が補完される作りとなっているので、プレイしていて爽快感もある」

 

秘書「というわけでキャラ全体を見てきましたがどうでした?」

 

三剣「どのキャラにもきちんと個性がありシナリオとの整合性、そして次に語るメイドというコンセプトの融合性、当たり前のように感じるかもしれないがこれは非常に高度な技術が要求されるのだよ」

 

秘書「メイドだからといって媚びたり都合が良かったような描写がないですし、自然なテキストでキャラが立てられるのでスッキリと頭の中に入ってきます。ボリュームも十分です」

 

三剣「キャラの評価はSだ

 

 

<シナリオ>

 

 

秘書「シナリオのレビューにいきましょう。えーと今回はどうします?このゲームは結構特殊だと思うんですが」

 

三剣「そうだな、本来だったらキャラ毎のレビューと全体のレビューについてそれぞれ思ったことを羅列していくのだが、今回は普段メインにおいているこの展開をあえてしないことにする」

 

秘書「とはいえシナリオのレベルは高いです。メイドモノとしての以外の評価、つまりテキスト描写や物語の展開は高水準にあります」

 

三剣「それに凄いのが伏線や謎がきちんと無理のない形で回収されるという事だ。それぞれのヒロインに関係するシナリオと本作の本筋の謎をちゃんと絡めてそれをうまく料理している」

 

秘書「火焔聖母でもそうでしたが一つの作品にまとめる手腕というのは相当にありますね」

 

三剣「構造と設計を間違えたりする作品がよく見られるようになってしまった昨今、ちゃんと一つの作品として仕上げてくれる存在は貴重だと思う」

 

三剣「とはいえこのゲームはメイドについての知識が有るか無いかで印象がガラリと変わってくるモノでもある。だからこそメイドそのものについてをメインに語っていく」

 

三剣「だから正直、ここまで自分の不勉強を呪った作品はなかったからからね」

 

秘書「そうなんですか?」

 

三剣「社会学的なメイドの立ち位置を知らなかったからさ、キャラエンドでメイドエンドと恋人エンドを何故分けたのかについて最後まで分からなかったんだ」

 

秘書「確かにそこら辺は分かりにくいかも知れないですね。社会学的なメイドの知識がある方が珍しいと思いますし」

 

三剣「だからもしここを見ている方で未プレイの方がいたら是非参考にしていただきたいと思う、これを知るのと知らないのではゲームの印象もずいぶん違ってくると思うし、もちろんプレイ済みの人でも参考にして頂ければ幸いに思う」

 

秘書「ではメイドについてなんですが今回メイドを語るに使う参考文献はエマ〜ヴィクトリアンガイド〜ですかね」

 

三剣「んー確かに、メイドといえばヴィクトリア朝のメイドを指すんだけど、アレはプロテスタントだからな

 

秘書「え?」

 

三剣「もちろんエマ〜ヴィクトリアンガイド〜は最良の入門書だ。萌えブランドではない社会学的なメイドの基礎知識を蓄える上でこれほど適切な物もない。学術書は値段も高い上に絶版になった物もあるにも関わらず値段も1000円を切っているからね」

 

秘書「というとエリュシオンはカトリックベースということですか?」

 

三剣「カトリックはカトリックなんだが、ドイツがモデルとなっていて、しかもあそこはあそこで非常に複雑らしいのだが、そこまで掘り下げるととんでもなくなってくるので、プロテスタントのメイドの全体的な立ち位置から、主人とメイドの関係についてカトリックベースとプロテスタントベースに分けて語りたいと思う」

 

秘書「ということで本作のキモである「メイド」なんですが、これは一体どのようなモノなのでしょうか」

 

三剣「メイドというのはservantの女性形であるmaid servantの省略形の事をいう。サーバントは召使いという意味だから女性使用人としての意味はそのままにあるのだ」

 

秘書「私達がメイドと聞いて想像する一番のスタイルはヴィクトリア朝のメイドですね。ちなみにヴィクトリア朝という王朝は存在せず「ハノーヴァー朝ヴィクトリア女王時代」というのが正式な意味となります」

 

三剣「何故メイドと呼ばれるモノがヴィクトリア朝のモノかというと要はイギリスの絶頂期とメイドの絶頂期が重なり、世界各国にメイドというスタイルを確立したからにある

 

秘書「メイド服という事例を一つとっても細かい部分で違うモノの不思議と各国で統一されたデザインとなっているというのは余り知られていません」

 

三剣「以上がメイドに関しての基本的な知識、続いてメイドが何故発達したかにいこう」

 

秘書「了解です。実は元々イギリスには女性使用人は限られた分野にしか存在していませんでした。侍女や子守という女性しか勤まらない以外は原則として男性が占めていたんですね」

 

三剣「その中でメイド需要が発達してきた契機は二つある」

 

秘書「まずはメイドの賃金は男性に比べて半額以下の水準だった事。量的確保を考えるに辺りメイドの需要が高まるというのは自然といえます」

 

秘書「そして何より1777年に施行された使用人税です。アメリカ独立戦争で被った被害から回復する目的で導入されました。そしてその使用人税は男性使用人にのみかけられたんです」

 

三剣「ということでますますメイドの需要が高まり、結果的に爆発的に上昇し、最終的には全体の8割以上を占めることとなった」

 

秘書「もちろんあえて男性使用人を雇うことで自ら上流階級であることを周りに示したり、逆に女性使用人しか雇えない人間を見下したりしていたんですよね」

 

三剣「だが逆にメイドでも中流階級クラスの実力者、いわゆる上級使用人と呼ばれる人間が出現する。使用人達で階級が出現したんだな。大貴族の家政婦は下手をすれば中流以上の服装を持っていた。とはいえ最先端の流行はメイドに許されたものではないけどね」

 

秘書「そしてその上級使用人達が何をしたのかというと、上級階級の人間を真似る。要は主人奥様が催す社交をするようになりました。家政婦クラスになると家政婦専属のメイド、複数ある専用の個室が与えられたりしていました」

 

三剣「下級使用人にとっては憧れの的だったようだ。とことん世間体主義だなと思ったよ」

 

秘書「続いてメイドに就職する方法です。メイドになるためには広告を見て応募する、そして職業訓練校に入学する、地元の有力者に紹介状を書いてもらう、以上がポピュラーな方法ですね」

 

三剣「意外にも買い手市場だったみたいだがな。広告を打ってもなかなか集まらなかったという記録も残っている」

 

秘書「職業訓練校に入学するといっても当然授業料が必要であり余裕がない人にとっては無理です。無料の所もありますがその場合は働きに出てもしばらくは徒弟奉公、つまりは無料で働かなければならないと意外と厳しいのですよね」

 

三剣「となれば紹介状なんだが、誰でも書いてもらえるというわけではないし、紹介状に関しても有能な人間であれば紹介状なしでも不自由しなかったり、悪意のある記述をされたりと絶対的な威力は持っていなかったみたいなんだがな」

 

秘書「続いてはメイドの出世方法です。上級使用人になるためにはどうしたらいいのでしょう?」

 

三剣「まずは女性使用人の頂点に君臨する家政婦になる場合について考えてみよう。家政婦になるためにはまずキッチンメイドと家政婦直属のメイドであるスティルルームメイドの経験が必要となる。熟練者となったら家政婦募集に応募してなるのが一般的だ」

 

秘書「では逆にメイドを辞める時にというのは?」

 

三剣「寿退職が一般的だ。生涯を使用人に捧げるのならば上級使用人になるのも一つの道。キッチンメイドは洗濯屋になったり、コックは宿屋になったりする。基本的に自分で生計を立てるというスタンスだな」

 

秘書「ふむふむ、次に社会学的にメイドを雇うことというのは一体何を意味するのでしょうか?」

 

三剣「まずはイギリスについていうのなら「階級社会」としての役割がかなり強い国だといっていい」

 

秘書「上流階級、中流階級、労働者階級と三つに分けられますね。とはいってもこの分け方は正確ではありません。例えば農民にしても上流階級から労働者階級まで幅広く存在します。このわけ方はあくまでも便宜上だと思ってください」

 

三剣「ちなみにキリスト教圏では働かないことが善とされていた。労働というのは基本的に人が背負った罪になるのでそれから解放された人間というのは必然的にそれに対しての美意識を持ったというのは考えてみれば自然なんだ」

 

三剣「それと中流階級といってもかなり幅が広く、さっきの農民にしてもそうだが上層中流階級は貴族クラスの財産を持つスクワイアと呼ばれる人たちもいる。誇るべき血筋と家柄はなくても貴族の仲間入りを果たす人間もいたのだ」

 

秘書「その分成り上がりと忌み嫌われていたようですけどね。成り上がりが嫌われるのは何処の国でも一緒というか何というか」

 

三剣「スクワイアは金だけ持っていればいいのではなく、カントリーハウスと呼ばれる由緒正しい場所とセットになった豪邸を購入し、たくさんの使用人を雇うことが必要とされる

 

秘書「原則として上流階級と呼ばれる人たちは貴族、及び準男爵、勲爵士、及び先程述べたスクワイアを指すジェントリと呼ばれる人たちで構成されています」

 

秘書「そして金だけ持って土地を持っていないというのはスクワイアではなくただのジェントルマンなんですね。そして下層中流階級はいわゆるメイドを一人を雇うのがやっとの収入を持つ人たちの事です」

 

三剣「んでたくさんの使用人といってたが、メイドを雇うというのは「私は使用人を雇う余裕がある」という世間に誇示するため、つまりは自分が中流階級であること示すために雇われていたのだ

 

三剣「実際労働者階級と変わらない下層中流階級もいて、そういう人は玄関先を掃除してくれるメイドだけを雇っていたんだ

 

秘書「そうしないと外見的には労働者階級と変わらないですからね。しかし中流ということを示すために必死で働く、なんか矛盾していますね」

 

三剣「まぁ宗教が生活習慣そのものに影響力を及ぼすからな」

 

秘書「職業によっても分けられますから。リスペクタビリティと呼ばれる法廷弁護士や官僚などといった職業でも階級は分けられています」

 

三剣「以上がメイドの社会的立ち位置だ。メイドの社会的立ち位置をもう少し詳しく知りたい方がいたらエマ〜ヴィクトリアンガイド〜を参照にして欲しい、メイドの詳しい歴史まで解りやすく記述されている」

 

秘書「以上が序論ですね。後半からは、カトリックとプロテスタントの立ち位置の違いにいきますか?」

 

三剣「いや、その前に役職を紹介しておこう。一口にメイドといっても色々な役職があるから」

 

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