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今夜の番組チェック


(無題)






乗ってきた電車から降り、ホームにあるエレベーターに乗り込んだ。

時刻は5時過ぎ、そろそろ帰宅ラッシュの時刻だが都心の方向に向かっているホームなので、人はまばらだ。

そのエレベーターは元々障害者用のエレベーターとして作られたらしく、かなり広く作られている上に、ドアの開き時間も長い。

俺はそれにすでに何人か乗り込んでいたエレベーターの中に入り「閉」のボタンを押しドアを閉める。

エレベーターが動き出し下に降り始める。

そのとき、急に室内の電気が消えたと思ったらスッとエレベーターが停止した。

あまりに突然のことだったので一瞬とまどう。

すぐに回復するだろうと思って少し待ったのだが、再び動き始める様子がない。

「緊急用のボタンを押したほうがいいんじゃないの?」

後ろからサラリーマン風の若い男の人がポツリという。

それももっともだと思ったので俺はボタンを押す。

しかし押しても特に何の反応もなかった。

こういうボタンを押すのは初めてなので、押した直後にリアクションが何もないのがいいのか悪いのかも分からず、俺は二、三回ボタンを連続して押すと、そのまま手をおいた。



それから二十分が経過したが何の反応もない。

さすがに徐々に不安になってきた。

エレベーターの中にいるのは俺を含めて4人。一人は俺、もう一人は先ほどポツリといった背広を着た若いサラリーマン風の人、もう一人は中年の女性、主婦かな?もう一人が中年の男性。サラリーマンには見えない。どっちかというと自営業を営んでいる雰囲気だ。

女性は、不安そうにキョロキョロしている。中年の男性は先ほどから「駅員は何をやっているんだ!」とぶつぶつ文句を言っている。

「まだ動かないね・・・外はどうなっているのかな?」

とその時、先ほどポツリといった男性が俺に話しかけてきた。

「さあ?外側のざわめきも少し聞こえますし、単純に故障じゃないですか?」

と、俺は返す。

「故障かぁ、まずいなぁ今日はお得意先を回らなければならないのに・・」

「お得意先・・・営業の仕事とかされているんですか?」

「うん、コンピューター機器の販売部にいるんだ」

「へぇ、営業って大変そうですね?」

「う〜ん、確かに色々気を使わなくちゃいけないし、大変といえば大変だけどそれだけ人と接する機会が多いからね。どうせやるんだったら楽しくやっているよ」

というと俺を見る。

「君は、え〜と大学生?」

「はい」

「何の勉強をしているの?」

「情報です。ITですね」

「へぇ、理系なんだ?理系って辛いと言うけどホント?」

「う〜ん、他のところは分からないですけど、自分が通っているところは辛いと言うほど辛くはないですね。というか入学すると周りもそうなのでそれが普通みたいに感じますし、それに研究室によってかなり分かれますね」

「ほう、いまから大学?」

「えー、大学は大学なんですけど、友達と約束していて、体育館でバスケをするんですよ」

「バスケか、サークル?」

「いえ、仲がいい友人で集まって体育館借りて週一でやっているんです」

「ふーん」

と、そのとき、急にエレベーター内が明るくなり、再び動き出した。

そして中二階のフロアに辿り付き、ドアが開く。

その先に駅員が立っていた。

ドアが開くと駅員は頭を下げる。

「申し訳ございません、突然の停電が起こりまして、いまようやく回復しダイヤの方も不休作業を続けております」
「どこかお怪我はありませんでしたか?」

怪我といっても別に止まってだけで、止まった時間もさほど長かったわけではなく、俺ら二人は「大丈夫」と一言だけ告げた。

中年の女性は駅員に会釈するとそのまま改札口に向かい、中年の男性は駅員に文句を言っている。

俺ら二人はそのままエレベーターを出て目的の電車のホームに向かった。

その人は俺と違う電車に乗るというのでそこで別れることとなった。

「じゃ、バスケがんばってね」

と笑顔で手を振る。

「はい、そちらも仕事がんばってください」

俺も笑顔で手を振り返す。

そういうと俺はその人と別れた。


腕時計をちらりと見る。

まだ三十分しか経過していない。

思ったよりも短かったようだ。不安もあったのか一時間ぐらいに感じたのだが・・。

肝心の電車も突然の停電騒ぎで、まだダイヤは乱れているようだ。

時間をどうつぶそうか考えたが、ひとまず俺は乗り換え電車のホームの階段を駆け上がることにした。


あとがき

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