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黙示録

 エルディア王宮。そこにある一つの大きな部屋。そこで本を読んでいる。一人の 老人。
 その目は冷たい光が宿っている。
 そのとき、そこの部屋をノックする音が響きわたる。
 その老人は本から視線をはずしドアの方に向く。
「誰だ?」
「おくつろぎの所申し訳ありません、御堂です」
「・・入れ」
 ドアが開く。そこには少し白髪の入った、神経質そうな中年男性が立っていた。
「ごきげんうるわしゅうございます陛下」
「私のご機嫌取りなどどうでもいい、用件を言え」
「といっても・・・こんな夜更けに私の寝所を訪れるぐらいだ、例の件が済んだのか ?」
「さすがでございますな陛下、察しの通り」
「そうか、良くやった、報告しろ」
「はっ、やはり陛下のお察しの通りエルディアの上級官僚エール仰でございました」
「その情報の出所は?」
「桂木とシリアの二人でエール仰の側近に近づき、抱き込んだそうです」
 それを聞いて王は笑う。
「シリアの手柄か?」
「おそらく」
「はい、好色そうな男でしたから」
「ふん、自分の娘によくやらせる」
「仰は民衆に民主主義の教育を施すように色々と策を弄していたようです」
「成る程・・奴は今どうしている?」
「拷問室に・・・」
「ディーブがか?」
「はい」
「奴に生きられてはやっかいだ、ディーブに極秘の内に始末しろと命令しろ、後の処 理はすべて御堂、お前に任せる、そうだ始末に使う薬品はこれを使え」
 そういうと王は小瓶に透明の入った液体を御堂に渡す。
「ドールマンに開発させたものだ。強力な自白剤、催眠にも利用できらしい、まだ実 験段階だが・・ちょうどいい、人体実験だ」
「仰せのままに、あ、後もう一つ報告が」
「何だ」
「桂木の件なんですが・・」
「桂木?奴がどうした?」
「なにやら王に近々報告したいことがあるとか・・」
「報告・・なるほど、わかった、心にとどめておく」
「後もう一つ・・おそらく今回の民主主義の黒幕はおそらく」
「アクアだろ、言わなくても分かる」
「ご存じでしたか?」
「みどうー」
 王は笑いながら御堂に近づく。
「それを私に報告してどうするつもりだ?アクアを殺せといわれたら殺すのか?え ?」
「陛下が願うならば・・」
「ふん」
「確かにあいつを生かしておくのはやっかいだ・・切れる女だからな・・民主主義で 民衆を扇動しているとの報告も入っている、だが・・・まだ生かしておく」
「まだ・・?」
「時期が来たら処分するさ、あいつにはまだ使い道があるのでね」
「使い道・・」
「気になるのか?」
「・・・多少は・・」
「もういい、喋りすぎた、任務ご苦労だった、下がれ御堂」
「はっ」



黙示録



 コツコツコツコツ
 暗く薄暗い地下へと通じる階段。そこを降りている葉巻をくわえた一人の男。身長 は高く体格もがっしりしている。脇は不自然に膨らんでおり拳銃を携帯していること が分かる。その体から発する殺気は感じるもの願じればかなりの手練れである事が分 かる。
 私の名前は桂木源三郎。エルディアという中東にある小国の情報部つまり諜報機関 の幹部。
 ここはエルディア王宮に密かに存在している拷問室へと続く階段。私は今そこに向 かっている。
 つい先日エルディアに潜入していたスパイを逮捕し、連行した。そしてそいつは今 その拷問室にいる。
 私が階段から下りている今現在でも男の叫び声が聞こえてくる。何時聞いても嫌な 音だ。
 そして私は拷問室の前に立つ。そして中に入った。 
 
 そこには鎖でつながれ体中に傷を負った、意識がもうろうとしている一人の男がい た。そしてその横には数人に男達が武器を持ち取り囲んでいる。
 そしてその景色を薄笑いを浮かべならが酒の肴にしている太った東洋風の男。
 私が用があるのはその太った男・・・ディーブだ。
 ディーブは入ってきた私の顔を見る。
「おお、これはこれは桂木さん、どうしました?こんな所に?」
 笑顔で私に話しかけるディーブ。一見屈託のない笑顔だが裏には醜い顔が潜んでい る。そんな顔だ。
「ディーブ、何故エール仰を拷問する必要がある?誰の命令だ?」
 私の問いに不思議そうな顔をする。
「ご存じないのですか?御堂長官ですよ」
「御堂が?」
 私は顔をしかめる。エール仰を拷問する理由はどこにもないはず。あいつはいらな いことはしない合理主義なのでこのような指令をするとは考えにくいのだが。
 そのときヘアのドアが開き御堂が拷問室に入ってきた。
「御堂長官」
「御堂」
突然の来客に二人とも驚き、私とディーブは御堂に目をやる。
「ほっほっほ、エルディア情報部幹部勢揃いと言うところですか・・」
 楽しそうに笑うディーブ。
「ディーブ」
 ディーブの言葉を無視するような相変わらずのポーカーフェイスで話しかける御 堂。振り向いたディーブに小さな小瓶を投げる。
「?御堂長官、これは」
「ドールマンが開発した自白剤だ。これを投与しろ」
 御堂の言葉に幾分顔をしかめるディーブ。
「自白剤ですか・・・これで終わらせてしまうのは少々もったいない気が・・・」
「陛下のご命令だ。この自白剤は催眠などに色々と応用が効くらしい、まだ実験段階 何でな、ついでに人体実験だそうだ」
「・・・分かりました」
「ちょっと待て御堂」
 私は御堂を制しようとする。しかし当の御堂は私に外に出るよう顎でしゃくる。
「では後は任せた」
「はい、お任せ下さい」
 そういうと御堂と私は外へ出る。そして拷問室の扉が冷たく音を立てて閉まった。


「御堂、どういうつもりだ?」
 私は御堂に問いただす。無論それはエール仰に関してのことだ。
「陛下のご命令だ。エール仰を殺せとな・・」
「・・・・」
 私は顔をしかめる。
「そんな顔をするな、陛下は民主主義活動が国内で活発化するのに懸念を抱いてい る、それを防ぐためだ」
「だからといって殺すことは無かろう、そんなことをしたら逆に王権への反発心で民 主化が進むぞ」
「それに第一、民主化への懸念は王権にあやかっている連中が・・・
「おおっと桂木・・滅多なことは言うもんじゃないぞ、今の言動は聞かなかったこと にして置いてやる」
「・・・・」
「とりあえず今回の任務は終了だ。休みを取るといい、英気を養え・・」
「分かった・・」
「ではまた・・・」
 そういうと御堂は歩き出した。



 ある一つの命が生まれてくるために・・・・

 我らは多くの犠牲を払うのだ・・

「ん・・・アークア・・え?」
「アルカ、アルカ・ノバルティスだ」
「・・・アルカ・・・・」
 エルディア科学局、エルディアの科学力の粋を集めた国内最高の水準を誇る研究機 関、研究分野は多岐にわたりその国内に占める重要度は高い。国家予算を積極的につ ぎ込み、他の国のスポンサーも付いている。そしてその総まとめ、そう、今私の隣に いる人間・・エルディア科学局局長。ドールマン・孔だ。
「彼女は・・・・生きているのですか?」
 ここはエルディア科学局、機密レベルマックスの研究室、そこに私とドールマンが いる。
「いや・・もう死んでいるといった方がいいな」
 私の前には一つの大きな筒状のもの、そしてその中に水で満たされたいてたくさん のコードにつながれた少女。アルカノバルティスが静かに眠っていた。
「桂木さん、私が長期出張でいない間、ものすごいものを仕入れてきましたね」
「・・孔、仕入れてきたとか・・ものとか・・彼女は人間なんだぞ」
「それは分かっていますが・・・・」
 その時研究室に研究員が入ってきた。その顔は高揚して息切れしている。
「どうした?」
「ついに解読できました!アルカノバルティスの遺伝子・・XTORTが全て!!」
 その瞬間ドールマンは私を見る。
「ん?どういうことだ?桂木、EXTORT?確か・・・・・・英語で奪うという意味だっ たな」
「いや違う、Eは入れなくていい、XTORTだ」
「?」
「まあまず研究員が持ってきたこれを見て見ろ」
 腑に落ちない顔をしながらも研究員が持ってきた書類に目を通してみる。
 そして十分後、ドールマンはぶるぶる震えだした。顔は紅潮し目が血走っている。
「か、桂木さん・・・・こ、こ、こ、これは・・・・・!!!」
「どうだ?」
「すばらしいものなんてものじゃない!!世界を変えられるぞこれは!!」
「ああ、これが実現すればエルディアは国際的な地位が向上し、日本のような先進国 にはいることも夢ではない、この子の遺伝子はこの世から不治の病を無くす素晴らし いものとなるだろう」
「桂木さん、これを私の手で研究していいのか!?」
「ああ、無論そのつもりだ、陛下もこの計画には非常に興味を示して下さっている」
「計画?」
「そうだ・・・Cプロジェクト・・・私はこの計画をCプロジェクトと名付けようと 思っている」
「そうか・・・ククククククク」
 かつて無いほどの充実感をみなぎらせた顔になっている。
「よし!おいそこのお前!」
 ドールマンは書類を持ってきた研究員を呼びつける。
「すぐこの結果をもっと詳しく分析しろ。緊急会議を開く!」
「は、はい!」
 研究員は急いで外にでていく。
「何だ、長期出張から帰ったばかりだろ?疲れていないのか?」
「馬鹿言わないで下さいよ、こんな素晴らしいものを目の前にして寝るなんてもった いない!」
 興奮し真っ赤になっている孔、こいつはそうなのだ。いわば専門馬鹿という奴、金 と環境さえ与えてやれば馬車馬のごとく働き続ける。まあ孔は頭はエルディア随一と いっても過言ではないのでそういう人間がいてくれることは国にとって非常に助かる ことは助かる。

 それからというものエルディアは実に順調と言っても過言ではなかった。民衆の生 活は比較的に向上し国としての地位も向上してきた。
 無論その裏には我々情報部の諜報戦略が大きく作用したのは言うまでもない。  そしてある日、私は御堂に長官室に赴くように命じられた。


「陛下の容態が芳しくない・・?」
「ああ、日に日に悪化している」
 ここはエルディア情報部の長官室。そこに御堂と私がいる。
「どういうことなんだ?陛下はこれといった持病は持っていなかったはずだが・・」
「それがな・・・」
 御堂は私に耳打ちをしてくる。
「毒物だ」
「毒物だと!?」
 私は驚く。毒物だと?
「しかしそれだとしても妙だぞ」
「ああ、まだ陛下が生きていると言うことだろ?それならもう調べはついている。陛 下が毎日食されている食事にごく少量の毒物が混入されてきたんだ。一回じゃ致死量 には全然至らないが」
「まんまとだまされたよ、一回で毒殺しないとはな・・・毒を盛られた陛 下自身も今の今まで病気だと思っておられたのだ」
「・・・・」
「で、その犯人探しを我々に・・」
「いや・・そうではない・・・・それに・・・犯人は大体見当がついている」
「誰だ?」
 御堂はここで一呼吸置く。
「おそらくプリシア王女だ」
「プ、プリシア王女だと!!?」
 驚く私に御堂が笑う。なんて事だ・・・
「じゃあ王女は」
「いや、後少しの命だそうだ。その陛下のご命令でな・・殺さない事になった、陛下 がもっと元気ならば処断していたところなのだがな」
「?どういうことだ・・・・訳が分からないぞ、何故私にこのことを話す?」
「クククク、桂木、陛下はお前のことを高く評価しておいでだったぞ」
「?・・・どういうことだ御堂?」
「お前が提唱したCプロジェクト・・・もう第二段階へ進んでいる」
 私は混乱する。御堂は何を言っているのだ?
「Cプロジェクトの第二段階?万能薬でも作ったのか?」
 私の質問に今度は御堂が怪訝な顔をしている。
「?桂木、お前、何も知らされていないのか?」
「何もって・・・何がだ?」
「・・・・」
 御堂は少し考えると口を開く。
「まあ良い、以上だ、下がってくれ」
 私は食い下がろうとも思ったが御堂は容易には口を割らない。それに・・・・

 どうやら私にこのことは余り話すことではなかったらしい。

 私はそれを心に秘め、長官室を出た。

 その夜、私はエルディア科学局の中にいた。
 御堂のあの言葉・・・どうも気になる・・・・第二段階だと?元々私はアルカの遺 伝子を世界の万能薬を作り、それを持って富を得てエルディアを向上させようと言う のが私のねらいだった。
 うまくいけば世界的な国家になれる。世界的な国家とは言い方が少し変だがエル ディアは独立し国連に加盟することが決まったとはいえまだまだ小国扱い、発言力は 大きくない。
 しかしこれが完成すれば先進国はエルディアを無視できなくなる。

 私は一般研究棟から機密施設と入る、本来情報部がこんな所にはいるのには許可が 必要なのだが・・私はプロジェクト関係者のためそれが許されている。
 私は一つの扉の前に立つ。ドールマンの研究室だ。私は入り口にあるカードを差し 込む。
 
 error

「!?」
 ピーという電子音と共にエラーの文字が表示される。私は驚く。おかしい、前まで は入れたのに。
 私はもう一度入れてみる。しかし結果は同じだった。
「どういうことだ?」
 その時私の後ろで声がする。
「どうした?中に入らないのか?」
 私は振り向く。聞き覚えのある声・・・・・・御堂だ。
「御堂・・・」
 私は御堂をにらむ。しかし御堂はそれを無視して話を続ける。
「情報部がこんな所に用はないはずなのだが・・」
「それはお前にもいえるだろう?」
 私の言葉に薄笑いを浮かべる御堂。
「機密施設に入るのにはこれが必要だ」
 御堂は懐から自分のカードを取り出す。
「提唱者はお前だ。見る必要があるだろう」
 御堂はカードを通し中にはいる。
 そこはいつもの研究風景があり特に変わったことなど無い。
 その中で研究員に指示していたドールマンが私達に近寄ってくる。
「ご苦労様」
 御堂がドールマンに声をかける。
「どうだドールマン、研究の方は?」
「はい、まだ完全とはいえません、ボディの方は完成したのですが・・」
 そういうとドールマンは頭を指さす。
 いきなり訳の分からないことを話す二人。そして唐突に歩き出した。御堂は眼で私 に付いてくるように指示する。
 そしてその部屋に入り口の他にもう一つのドアがある。二人はその前に立つ。御堂 は私に向き帰る。
「桂木、お前が提唱してくれたCプロジェクト・・その粋を集めたのがこの向こうに ある」
 そういうと御堂はカードをその扉に通す。
 ピッと言う音がしてその扉がゆっくり開く。
「!!」
 私はそこに映し出されたその光景に放心状態になる。まさか・・・まさか・・・C プロジェクトがこんな事に利用されていることになろうとは!
 
 そこには液体に満たされた筒状の中に浮かんでいる一人の裸の少女が静かに眠って いた。

「こ、こ、これは・・・・・・」
「ク・・・クローンか・・・!!」
 私はドールマンに目をやる。ドールマンは私の問いに少し考える。
「うーん、それは正確な表現ではありませんね、確かにこれはプリシア王女の遺伝情 報を元に組み立てられたものですが・・概念上はこれにオリジナルは存在しないので すよ。だからクローンという表現自体が違います。クローンは所詮クローン、オリジ ナルを越えることは出来ません、これはクローンを越える新たな生命体、これ自体が オリジナルなのです、それがホムンクルス、そう・・・神の器です!」
「プリシア王女の・・・・ホムンクルス・・・神の・・・器・・・」
 なんと傲慢な名前を付けるのだろう。
「それに・・・」
 ドールマンは目を伏せる。その語り具合からどうも自分の研究に酔いしれているよ うだ。正直鼻につく。
「これを作るのに今までαからλまで作り・・失敗しました。そしてついに完成した のです!認識番号μ-101、コードネームは・・MAYAKO・・」
「!!!!!」
 私は御堂を見る。その意図を察し御堂は笑う
「そうだ・・・かつての私とアクアの愛娘・・・真弥子だよ・・」
 御堂は迷いのない顔をしている。思わず私はカッとなる。
「御堂貴様!!」
 御堂をにらみつける。しかし御堂は動じない。
「そう目くじらをたてるな、先も言ったとおりこれは本当の真弥子のコピーではな い、これ自体はオリジナルだ」
「・・・・」
 私は言葉を失う。
「まだこの真弥子は使いものにならない、λまでは人の姿すらしていなかったので ね、ようやくボディは姿だけは完成したわけだが・・まだまだ組織がもろい、今外へ 出せばたちまち崩れてしまう、まだ肝心要の脳の問題もある、おそらく後数年はかか るだろう」
 私は黙って、御堂の言うことを聞く。そして恐ろしくなった。

 これが私のしてきたことか・・・エルディアのために尽くして・・・・その結果生 み出してしまったのか・・・・


 私はエルディアを逃げ出した・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





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