平成19年(れ)第1号

横浜事件第四次再審裁判判決

またも免訴!

有罪無罪の判断回避、実体審理せず

 横浜事件第四次再審裁判の判決が3月30日に横浜地方裁判所(大島隆明裁判長)であり、第三次再審裁判と同様免訴が言い渡された。

 判決言い渡し当日は午前9時半が抽選の締切だった。時間が早かったせいか第一回公判より傍聴希望者は少なかった。

 裁判長の言い渡しは、「被告人を免訴する」であった。その時の廷内は異常なぐらい静まり返っていた。落胆というより、事実の確認がまだできていない、といったようだった。現に私は隣席の人に「どっちですか?」と聞かれ「免訴です」と答えた。

 判決文での事実認定は再審決定、第一回公判のものが維持された。拷問は推認され、泊は遊興を目的の会合とされた。そして泊の会合や細川論文の掲載目的や、細川家族への救援が共産党再建準備のためだとすることには顕著な疑いがあるため、「被告人らの口述書や泊の写真などの証拠は、被告人に対して無罪を言い渡すべき、新たに発見した明確な証拠」と明言した。 さらに「再審公判では、再審開始決定の根拠となった全ての証拠を取り調べた」と言い「本件はすでに半世紀以上も前の事実を対象とするものである」から「新たな証拠が発見される可能性は極めて乏しく、法的な障害がなければ、再審公判において直ちに実体判断をすることが可能な状態にある」と指摘した。そして、「被告人が既に死亡しているのであるから、免訴判決による刑事裁判手続きからの早期解放が利益であるという理は必ずしも妥当ではない」とし、さらに「死後再審は主に死者である元被告人の名誉回復の手段として機能するもの」「無罪判決なら公示されるが、免訴では公示されない」「免訴事由が存在するからといって実体判断せずに免訴判決を下すのであれば、死者の名誉回復を望む遺族らの意図が十分には達成されないことになるのは明らか」との見解を示したものの、免訴理由は以下のように述べた。

 一般的には、再審公判は「再び有罪の判決の可能性もある」ので、「審理打ち切りによる被告人の利益は存在する」。免訴判決は「単純に被告人の利益保護のためにだけ設けられた規定ではなく、公益的な強行規定であり」「被告人側が訴訟手続きから解放される利益を放棄さえすれば免訴判決をせずに無罪の実体判断が可能であるとは言えない」とした。

 また、「再審開始決定により有罪判決の効力は直ちに失われないものの、再審で免訴判決が確定すれば有罪の確定判決が失効し、被告人の法律上の不利益はなくなることは学説上異論がない」ため「有罪判決の失効という再審判決の効力においては、無罪判決と免訴判決では異なるところはない」と言う。

 再審公判は有罪「確定前の刑事訴訟手続きに戻りそれに則って改めて審理・判断するのが原則である」から「再審公判の特殊性から実体判決が許容されるとする根拠は乏しい」しかし、特高による拷問が認定されたこと、判決が終戦直後の混乱期に言い渡されたこと、事件記録が故意に廃棄されたと推認されること、などの「特殊事情」があったとしても、「免訴事由のある場合は通常とは異なる取り扱いをすることを是認する理由になるものとはいえず、結局、本件再審については実体判決をすることはできない」と結論づけた。

 その結論を繕補するように免訴判決の効果について以下のように示した。

「無罪の公示がされず、名誉回復を望む遺族の心情に反することは十分に理解できる」しかし免訴判決を受けた者で、免訴事由がなく「無罪の判決を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して補償を請求することができ」本件において「今後行われるであろう刑事補償請求の審理においては、刑の廃止及び大赦という免訴事由がなかったならば、無罪の判決を受けるべきものと認められる事由があるか」を判断することになりその決定の中で「実体的な判断を示すこととなる」そして補償が確定すると「官報及び申立人の選択する三種以内の新聞紙に掲載し公示しなければならない」と規定しているため「再審無罪の公示の場合と同一視はできないが、免訴判決を受けた被告人の名誉回復を図ることができる」とした。


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